- Column -

Fun Fluting!

フルート三昧で配布するミニ新聞に掲載された気ままなコラムです


フルート三昧  INDEX

[ Vol.1〜Vol.6 ]  Vol.7〜Vol.12  Vol.13〜Vol.18

Vol.19〜

Vol.1:フルート吹きのティー・タイム

Vol.2:フルート吹きの嘆き

Vol.3:なにやろうか

Vol.4:ドップラーの音楽は、文句無く楽しい。いや、楽しすぎる!

Vol.5:え、楽譜どうりじゃいけないの?

Vol.6:演奏会はコミュニケーションの場だ



Fun Fluting! Vol.1-1996.8/4(Sun.)

(シリーズ「フルート三昧」Vol.1)

−フルート吹きのティー・タイム−

 早春のある日、都内某所にたまには親睦をはかるべく集まった数人の笛吹き。K氏とその後輩の女性達である。K氏「あー疲れた。おととい本番できのうは早くから生徒てんこ盛り。みんな発表会近いから殺気だってて。こっちも熱くなっちゃった」。「ほぅ、そりゃ大変だわ」とS嬢。O嬢「でもKさんてパワーあるから。毎日本番でも平気じゃないですか」。K氏「そんなことないって。これで必死に生きてるんだから。去年のデュオの演奏会、しっかりやったじゃないの」。O嬢「あれはKさんにひっぱられただけ。だって知恵熱出ちゃったじゃない」。K氏「そうだった。でもよく頑張った。すごくよかったよ」。I嬢「みんなすごいっスね。なんかいい仕事ないっスか」とぽつり。一同「・・・」。K氏「待ってたっていいことなんかないぞ。それより新しくコンサートはじめないか。アンサンブル中心のやつとソロ中心のふたつ」。S嬢「ほう、そりゃええわ。わたし、それに命かけますから」。I嬢「それ、やりましょう!」。O嬢「えーん、わたしドイツ行き決まったから参加できない」。「これ、毎月やろうよ、充実するぞ」とK氏。S嬢「ほう、ほう、でもちょっときつくないですかね」。I嬢「それ、いつ練習するんですか、時間あるかな、吹けるかな」。K氏「I、おまえは気分がノッテくれば問題ないだろ。それに時間は作るものだよ。Oなんかこれからドイツで毎週クラスコンサートだぞ。月1回や2回の本番なんて楽勝楽勝」。S嬢I嬢「・・・」。本当にきついのは、練習するひまがない程雑用が一気に10倍は増えたK氏であった。

−かくして演奏会は始まった−

 はじめは、サロンコンサート。フルート・トリオである。
 K氏「さあみんな、開演だぞ。あれ、2人とも表情かたいぞ。輝くような笑顔で出ていかなくちゃ」。I嬢「Kさーん、お客さん目の前にいますよ、ねえSちゃん」。S嬢「ほう、ほう、ほう」。「ナニ言ってるの。あたりまえでしょ。その美貌をはっきり見せる事が出来てよかったじゃない」とK氏。突然解説のO氏「始めていいですか、はい、ではいきますので」さっさと出て行く。K氏「さあ、これから音楽三昧の楽しい人生、始まり始まりい」。 M・K

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Fun Fluting! Vol.2-1996.9/1(Sun.)

(シリーズ「フルート三昧」Vol.2)

−フルート吹きの嘆き−

 19世紀中頃のこと。
 A「あー、なんかこの頃フルートってもてないな、おいB、オケの方の調子どう?」。B「大変だよ。退屈なアリアの伴奏か、やたら長くて難解な曲ばかりだもんな、最近。その後生徒増えた?」。A「いや、だめ。あのフランツだって食えなくてお嬢様のへたくそなピアノにつきあってるんだから。いいリート書くのにな、世の中大袈裟な音楽一色だもんな。でもオレ、冬の旅好きだよ」。B「そうかぁ、我々笛吹きもなんとか一旗あげたいな。ポーランドのフレデリックなんか、あの虚弱体質のくせしてパリのサロンでおおもてらしいぞ」。A「パリっていえば、あのピアノ弾きのフランツ、向こうで成功したって。あそこのおやじ、職なげうって息子売り込んだらしいよ」。B「あぁ、あのモーツァルトの再来とかって騒がれたやつね。天井からゴムひもで指吊って鍛えれば、そりゃすごくなるんじゃないの。どっかにも離婚して家売って異国で成功させたってやつ、聞いたことあるけど」。A「知らん、ペリーに聞いてくれ。しかし、個性の世の中なんだな。初めて話した女性にプロポーズして断られたからって、あたりまえだよな、とにかくそれで自殺未遂して書いた曲が話題になっちゃうんだから」。B「もうこうなったら作曲家になんか頼っていられないぞ。我々の力を発揮出来る作品を自前で用意しなくちゃ」。A「そう、ハンガリーの例の兄弟みたいにね」。

−音楽性優先!でもテクニックも欲しい!−

 B「さて、オレ達テクニックには自信があるから、うんとハデなのつくろうか。」。A「テクニックにはしりすぎないよう注意しろよ。パリのサロンの甘さと優美さ、それにバイロイトの雄大さと」。B「でもすごいな、自分の作品にあわせて劇場造らせちゃうんだから。笛吹きじゃそうはいかない」。A「いや、そのスケールの大きい精神を持てっていうことさ。フルートは機敏さと声楽の様な息遣いが持ち味なんだから」。B「あの兄弟の曲、結構テクニカルだったよ」。A「まあ、勿論それも大事だけどね、シャンソンみたいな色気もあるじゃないの」・・・・・

 というような会話が聞こえてきそうです。M・K

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Fun Fluting! Vol.3-1996.10/13(Sun.)

(シリーズ「フルート三昧」Vol.3)

−なにやろうか−

ある日。
S嬢「Kさん、こんどのやつ何吹いたらいいですかネ」。数ある名曲の中から何を演奏するか、やりたい曲がありすぎて困ってしまう。K「こんどは大作曲家だな。全体のバランスも考えないとね。オレ、シューベルトやろうかな」。S嬢「ワタシ、シューマン」。K「どっち?」。S嬢「ロマンスの方」。K「あ、いいねそれ、Sと同じで美しい曲だよね」。まんざらでもないS嬢。本番の日に向け、体調を整えるのは当然だが、気分を盛り上げていくのも重要なのである。すでに演奏会の開始ベルがなり始めた。
 自主演奏会が月に最低2回はある現在、頭の中では常に演奏会開始のベルが鳴っている。ところが、音楽愛好家、つまりお客さんが、その演奏会でどんな曲を聞きたいか、我々演奏家には案外と分からないものなのである。そこで、生徒や知り合いに日頃どんな曲を聞いてみたいか尋ねてみる。「先生の演奏なさる曲なら何でも聞いてみたいです」などという、超素晴らしくビューティフルな答えはごくごく稀である。こういう場合、生徒は無責任なもので、言われた曲をプログラムに採用すると「先生、本当にあの曲やるの!?」と言われるのがおちである。大体、日頃演奏したいと思っていても、自身では絶対演奏不可能だと思われる曲目を希望するので、それらはとにかく難曲ばかりで、しかも何の脈絡もない。頭の中は開始ベルではなく、頭痛でガンガン鳴ってしまう。
 しかし、「先生、本当にあの曲やるの!?」という発言の真意はいったいどこにあるのか。まさか「先生、本当にあの曲や(れ)るの!?」ではあるまいな。

−アマチュアの発言は口に苦し−

 まあ、生徒や音楽愛好家の発言にはハラハラさせられること多々である。「あの人の演奏、もっと感情というか色気がね・・・」色気が何なのだ。これぐらいは序の口で、「楽器じゃないよ、腕だよ」とか「今はまあまあだね」という、(これでも)幕下クラスの発言もある。何がまあまあだ。進歩があるということだろ。勝手なことばかり言って。この発言に心当りのある方、少しは反省しなさい。M・K

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Fun Fluting! Vol.4-1996.12/8(Sun.)

(シリーズ「フルート三昧」Vol.4)

−ドップラーの音楽は、文句無く楽しい。いや、楽しすぎる!−

 演奏というものは、それがたとえ深刻な内容を伴っていたとしても、基本的には、楽しいと感じられる様な演奏をすべきである、というのが私の演奏に対する基本的な姿勢である。景気の良い世の中ならもっともっと、不景気ならなおさらで、義務とさえ感じる。ドップラー兄弟は、演奏旅行に自らの素晴らしい曲をひっさげて、(雑多な苦労はあったにしても)それは楽しかったに違いない。名人芸拍手喝采である。そこには、物事を単純素直に受け止めるおおらかな聴衆がいたはずである。日本の"専門家"の中には、それをスポーツ的、などと言って嫌う風潮があり、我々専門家は音楽を楽しんではいけないものなのだと、勘違いしてしまう。演奏のスタイルにも"決まり"みたいな物があって、ちょっとでもはみだすと受け入れてもらえない。もっとおおらかに音楽を楽しめないものか。
 今日、この会場にいる皆さんには、おおらかに音楽を楽しんで欲しいと思う。ただ、そこから本当に何でもいいから感想を持って下さい。それが、とても大切な事なのです。M.K

−夢見る乙女 / 井上 紀子 −

 サークルベッドに寝ていた時からジャズを聞いていた私の最初に持った夢は、ジャズピアニスト。いつも家の中ではジャズのレコードがかかり、父がサックスを吹き、私はというと、お箸を指揮棒の代わりにして、父が練習しているのに合わせて指揮(?)をしていたのです。それからの私の夢は、歌手、指揮者、etc...と音楽関係ばかり。中学生からフルートを始めてからは、もちろんフルーティストになる夢を持ちました。
 先頃、私の生徒に「将来の夢は?」と質問すると、「何もありません」という答えが返ってきました。同じ質問を何人かの生徒にしてみると、ほとんどの生徒が「何もありません」と答えました。きっと、はずかしくて私には言えないのだろうと思いましたが、もし本当に何もないのだとしたら少し寂しい気がします。私は、おばあちゃんになるまで夢を持ち続けたいと思います。
 現在、私のたくさんある夢の中から、一つだけ皆さんにお教えしましょう。それは、桃ちゃん(注:上坂桃世・5才。現在バレエに熱中)とバレエを踊る事です。
 皆さんはどんな夢をお持ちですか?

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Fun to Flute Vol.5-1997.2/9(Sun.)

(シリーズ「フルート三昧」Vol.5)

−え、楽譜どうりじゃいけないの?−

 本日は「王宮の響き」という、まったく典雅で高貴なタイトルである。これは益々一生懸命頑張らなくては、思ってしまう。もっともこのタイトル、自分で考えたのだが。別バージョンに「ベルサイユの香り」というのもある。それはともかく、本日はタイトルの示すとうりバロック音楽である。このバロックというのがくせ者で、なぜかと言えば楽譜どうり忠実に演奏してはいけないからである。さあどうしよう。昔先生からは「楽譜どうり、間違えないようちゃんと吹きなさい」とよく言われたのに。
−相手にはなをもたせる分業の世界だ−

 現代の音楽家達は、一部の例外を除いて楽器は楽器だけ、作曲は作曲だけ、指揮は指揮だけ、というふうにその役割は細分化されている。昔は違った。演奏者としてだけでは演奏する曲が無いので自ら作曲し、作曲家は人手が足りないので自ら演奏したのである。先に述べた「楽譜どうりに演奏してはいけない」というのは、楽譜がちゃんと完成していないのである。自ら演奏するので手を抜いたのか、パガニーニの様に技術を盗まれない様にしたのか定かではないが(?)、確実に言えるのは、その曲は演奏者によって完成するという事実である。つまり作曲者は曲という家の骨格や外見は完全に創るが内装は住人任せなのである。素敵な住まいにするか否かはその家の住人、つまり演奏者次第である。悪い意味で忠実な演奏は、退屈でつまらない。どの時代でも音楽は同じ、主張と歌心こそ音楽ではないか。

−悪平等は没個性、個性こそ素敵だ−

 それではどうなるのか。十人十色、まことに楽しい。これがバロックの最大の楽しみ、人間ウォッチングである。同じ曲をやたら元気に演奏する人、とてもエレガントに演奏する人、とにかく装飾音符を楽譜に書き足さなきゃ気の済まない人、様々である。何をやろうと勝手である。以前スイスでジョネ先生が誰かのレッスンで「バッハを感情込めて演奏していけないって、誰が言ったんだ!」と言っておられた。まったくそのとうり。今日はどんな演奏になるか、お楽しみ!M.K

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Fun Fluting! Vol.6-1997.5/18(Sun.)

(シリーズ「フルート三昧」Vol.6)

−演奏会はコミュニケーションの場だ−

 昨今のマルチメディアの発展と勢いには目を見はるものがあり、その変化の激しさにはついて行くのも大変です。2000年頃からは世界共通の移動電話のサービスも始まろうとしています。数年来話題の中心を独占して来たインターネットも一般にかなり浸透しているようです。
 インターネットも情報を仕入れる(閲覧する)だけでなく、最近では文字によるリアルタイムな会話も個人レベルで出来るようになり、電子メールと併用すれば海外在住の、例えば仕事での赴任や留学生とのコンタクトが容易かつ便利になってきているのは事実です。個人でインターネットにホームページを開設する人も爆発的に増え、ネット上でのコミュニケーションが盛んになってきています。
 しかし、懸念されるのは利便性ばかりを追求するあまり、人と人との直接的なコミュニケーションが薄れていく傾向にあるという事です。インターネットもうまく利用すれば、大変有用かつ素晴らしい仕組みです(私も電子メールをはじめとするインターネット利用者です)。誤解しないで頂きたいのですが、ネット上でのコンタクトが生活の中心にあり、その発展上に直接的なコミュニケーションがある、というのは本末転倒になりかねないという思いです。音楽家も音楽という娯楽を提供するだけでなく、音楽と共に交流の場を提供する、という新しい一項が重要な仕事の一つではないかと感じる様になりました。

−演奏会のスタイルは色々あっていい−

 「フルート三昧」の様な演奏会では、演奏者もお客さんも同じ土俵の上にいると言っても良いでしょう。この狭い会場で、見知らぬ人とはいえ会話が無いのも少しもったいないような気がします。休憩中に話しかけてみてはいかがでしょうか。勿論出演者にも。私は新しい出会いが大好きです。ですから、当演奏会やサロンコンサートなどの小規模な演奏会も、大ホールで行われる演奏会同様に大切なものだと考えています。大きい会場では、良い音響のもと身体の芯まで音楽を感じ、小さい会場では、音楽と演奏者・聴衆を身近に感じて交流を図る、と演奏会も色々あっていいではありませんか。M.K

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