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Maykoのピアノ相談室
  • Mov.1:合 図
  • Mov.2:フォーレのシチリアーノ
  • Mov.3:クラシックバレエ
  • Mov.1

    合 図

     長い間、更新しなくて申し訳ありませんでした。

     さて、私は日頃フル−トの伴奏をすることが多いのですが、今回は伴奏の始まりである合図(Einsatz)について書いてみたいと思います。

     演奏者はこれから演奏する曲の拍子とテンホ゜をイメ−ジしてからその拍子の末拍(1拍目から始まる曲だとして、4分の4拍子だったら4拍目)をきっかけに演奏を始めます。フル−トの場合はその末拍目に息を吸い込むと共に足部管を持ち上げ、下げきった地点から音を出し始めます。伴奏者は吸い込む息のスピ−ドでその奏者の持つ曲のイメ−ジを共感し、持ち上げた足部管の頂点と地点の距離からテンポを設定して弾き始めます。

     例えばAdagioのゆっくりとした曲なら"ハアーーー"と深く息を吸うと同時に魔法でフル−トを浮かせるかの様にそうっと持ち上げ静かに下げると同時に息を吹き込むでしょうしAllegroの速い曲なら"ッハッ!"と勢い良く吸い込んだ息と、刀を振りかざすかのような切れの良い動き−となります。それから同じAdagioの曲でもフォルテで荘厳な感じの曲とピアノで安らぎを感じる曲とではまた変わってきます。

     ソロイスツの上坂さんと大保さんとでも合図の仕方は違います。それぞれの合図の癖があるでしょうし、その曲に対する解釈が微妙に違うとも言えます。アンサンブルを組んで絶妙に息の合った演奏をする二人ですが、同じソロの曲を演奏するとまるでイメージの違う音楽が出てきます。これこそが音楽の醍醐味と言えるでしょう。ランパルの音の世界とかゴールウェイの音の世界があるように、誰もが自分しか作り上げることの出来ない音楽を目指していくことは芸術ならではの魅力ですね。(余計な事とは知りながら付け加えますと、あまりにもその事ばかり追求して、師のアドヴァイスをも無視してしまってはオリジナリティとは言えないのでございます。独創性と客観性の融合が不可欠とでも申しましょうか)

     フルートを楽しむ方の中には伴奏合わせをする時の合図に苦労なさることも多いのではないでしょうか。テンポは様々でも前述の基本は同じです。つまり4拍子だったら"1、2、3、ハアー、フゥー"で、ハアーの時に持ち上げて下げたときにフゥーです。これが"1、2、3、ハフー"となってしまうと悲劇の幕開けとなります。音を切るときもやはり合図が必要でして、持ち上げてから下げた地点で音が切れるのですが持ち上がったまま音が切れた時は、伴奏者は裏切られて孤島に取り残されたような気分になることがあります(ちょっと大袈裟ですが)。音を切る、特に曲の終わりの時は一段と繊細な呼吸と動きが要求されるのではないでしょうか。如何でしょうか。去年秋川キララホールで聴いたフルーリーの演奏は超絶技巧のテクニックと細やかな合図が印象的でした。

    では また

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    Mov.2

    フォーレのシチリアーノ

     今回は伴奏者の側から演奏のポイントをお話ししてみたいと思います。皆様おなじみの、フォーレの「シシリアーノ」を取り上げます。

     フォーレの曲といえばふんわりした端麗なイメージを、タッチやペダルに気をつけて透明感のある演奏が出来ると良いですね。

     最初の2小節はピアノの伴奏のみですから、フルート奏者の心の準備も待って、打ち合わせ通りのテンポで(ここがモンダイ!)弾き始めます。前奏は静かに波のように。 4小節目の左手のスタッカートは乾いた感じが嫌で私は少しペダルを踏みます。10小節目から少し伸びやかに(フルートのオブリガードを聞きながら)メロディーを弾きます。アウフタクトの"レ"の音を気を付けて弾かないと10小節目の1拍目がずれてしまいます。

     17小節目の長調になる音型は湖面にかかった霧が晴れるようなイメージですね。この間奏はとても美しいのですがガラス細工のようにどこか不安定な存在感です。恋人と待ち合わせをしていて"あっ!来た"と思ったら違う人だった、そんな気持ちがします。

     25小節目はたっぷり拍子を数えてフォルテーピアノの変化を表現します。フルートとよく合わせましょう。

     36小節目のラシ(♭)ドのラインはさりげなく聞かせましょう。

     41小節目の6拍目のシ(♭)はフルートが合図をすると42小節目がきれいに合います。

     ここは意外とやりにくいのではないでしょうか?フルートは休符の後のミ(♭)をピアノで吹くことや調も変わることもあってお忙しいでしょうが、ここは伴奏とピッタリ呼吸を合わせて頂きたいです。

     56小節目の突然弱くのフレーズは一瞬ハッと息を呑むような感じで。

     67小節はたっぷり演奏して、次に最初のメロディが始まる心構えをし、ソステヌートペダルを4拍目位から少しずつ深く踏んでいき68小節のpppは本当に静かに演奏しましょう。でもこれが本当にムズカシイです。

     私は74小節の左手が弾きにくいのでオクターヴ以外は右手で取っています。その時の右手の上の旋律の指使いは5−4−3、1(押さえながら変える)―3としています。75、76,77小節も左手の3,6拍目の音を右手で取る事が出来るので左から右へ綺麗につなげて弾けるのでしたら楽だと思います。

     あなただけにしか出来ないあなたの素敵な演奏の為に少しでもお役に立てば幸いです。

    では また

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    Mov.3

    クラシックバレエ

     今回はフルートの伴奏ではなくて、クラシックバレエのレッスンの伴奏をご紹介します。

     バレエは流れるようなとても優雅な踊りですが、実はパというステップの組み合わせなのです。そのパを日々鍛錬することによってあのように肉体を自由自在に動かすことが出来るのです。傍目にはダンサー達がとても軽々と足を上げているように見えるのでつい同じように出来そうに思いますが、素人が真似をすれば上がらないばかりではなくギックリ腰にでもなるのが落ちです。

     レッスンでは前半にバーにつかまってのレッスン、後半にお稽古場全体を使って大きな動きのレッスンをしています。そのバーレッスンの大まかな順番と音楽は次のようです。

    • プリエ(膝を曲げる動き)・・・ゆったりした曲
    • タンデュ(仏語で紐がピンと張られたという意味)・・・少し軽快な曲
    • ジュテ(投げるの意味)・・・鋭い感じの曲
    • ロン・ドゥ・ジャンブ・パール・テール(地面に片足で半円を描く)・・・ゆったりした3拍子の曲
    • フラッペ(打つの意味)・・・歯切れ良い躍動感ある曲
    • フォンデュ(溶けるの意味)・・・柔らかいふんわりした3拍子の曲
    • ロンデ・ジャンブ・アン・レール(空中で半円を描く)・・・勢いのある3拍子
    • グラン・バットマン(大きく叩くの意味。上まで足を蹴り上げる)・・・大きく飛び上がりそうな曲

     動きは同じでも組み合わせは様々で(例えばタンジュを前に、横に、後ろに、回数も速さもいろいろ!)生徒達は先生が指示した通りに即座に覚えて踊ります。(暗譜より難しそう…)ピアニストも先生の指示を見ながら、曲の決定と小節数の調整を行います(大体8小節単位で2倍か4倍の長さになる)。ゆったりした2拍子か元気の良い2拍子かそれとも3拍子かと、動きに合いそうで先生の求めるイメージを探りつつ曲を選びます。

     録音した音でレッスンする教室も多いのですが、ピアノの生演奏でのレッスンはピアニストの息遣いを感じて、音に合わせる事により敏感になるようです。あるアメリカ人の先生はとても厳しく、音に合わせるのは勿論のこと"ここのメロディーでは手がこの位置にあります"と、1小節単位に厳密に生徒全員が合うまで何度もやり直しさせていました。

     またある講習会でクラス全体に活気が感じられない時、ある先生は"あなた達が私のクラス(アメリカ)でもし踊っていたら、ピアニストから弾けなくなると文句を言われるだろう"と言い、音への思い入れの深さを感じました。(この時は逆にピアニストの私のせいかしらと勘ぐりもしましたが・・・)

     私にとってバレエピアニストの難しさは選曲にあります。提示された動きにピッタリ合った曲をその場で決めなくてはならないのです。曲選びに悩むのですが、クラシックのピアノの名曲は小節数が合わないことやその曲のテンポやイメージを壊して弾かないと合わないことがあるので私はほとんど弾きません。大体は暗譜しているのですがその中のどれにも合わないときは即興で弾きます。どんな曲がいいのか悪いのかとダンサーに聞いたら"例えばジャンプするのに重たい曲で飛んだら足が太くなっちゃうわ"と言うので、メロディーの持つ個性をしっかり捉えていなくてはと思います。これはどんな演奏にも心しておかなければならないことと思うのです。

     これだ!と思って弾いた曲が動きにピッタリ合った時は生徒達も上手に踊っているような気がしてとても充実感があるのです。

    では また

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