- Column -

クライス・コミュニケーション

室内楽シリーズで配布するミニ新聞に掲載された気ままなコラムです


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[ Vol.1〜6 ]  [ Vol.7〜12 ]  [ Vol.13〜 ] 

Vol.7:演奏するって、どういうこと?−1995.10/6(Fri.)

Vol.8:フルートは、どうしてフルートの音がするのですか?−1996.3/29(Fri.)

Vol.9:演奏者の心得・その1 考えたくもない緊張の瞬間− 1996.7/26(Fri.)

Vol.10:室内楽シリーズを振り返って−1996.11/6(Wed.)

Vol.11:ようこそ!新・室内楽シリーズへ−1997.4/18(Fri.)

Vol.12:ソナタって?作曲形式とは?−1998.2/13(Fri.)


クライス・コミュニケーションVol.7-1995.10/6(Fri.)

(上坂 学・室内楽シリーズ Vol.23)

−演奏するって、どういうこと?−

 ある有名なフルーティストの言葉。“演奏者自身がステージの上で楽しめないで、どうして聴衆が楽しめるでしょう”・・・・・・・・・・・。
 何というお言葉。わざわざご来場頂いたお客様のために、真面目に演奏しなくてはならないというのに。日々テクニックを磨き、素晴らしい音色を目指し、分厚い文献で時代の様式を学び、様々な楽器、様々な奏者の演奏を聴き、ああ、疲れる。三度のメシよりも大好きな音楽をするのも、これでなかなか楽じゃない。これって、音楽家に憧れていた頃考えていたのとちょっと違うなぁ。もう少し楽しい事があるんだと思ってた。達成感はすごくあるんだけど。
 でも、もう大丈夫。こんなにたくさん練習研鑚したのだから。この苦労もきっと報われるハズ。テクニック、音、そして演奏様式も完璧だ。お客さんもきっと喜んでくれるに違いない。さあ、あとは演奏会に向けて体調を整えなければ。そうそう、楽器の調整もしておかなくては。 

−演奏会って、なんて楽しいんでしょう!−

 演奏会ではうまくいった。お客さんにもほめられたし。でも、なんか皆疲れてたみたい。僕も疲れた。どうしてだろう、みんなもっと楽しそうにしてくれると思ったのに。いや、きっと楽しくないんだ!僕は気が付いた。やっぱり僕も演奏しながら楽しまなくては。考えてみれば、つまらないもの見て楽しくなるはずないものな。
 そう思ったら、肩の力がすうっとぬけて、演奏してて楽しくて楽しくて。それがお客さんに伝わるみたい。ステージから見えるお客さんが、仲の良い友達に見えた。こんなことなら毎日でもいいな。
 普段見ず知らずの人達が同じ事柄、時間を共有する事って、なんて素晴らしい事なんだろう。これだから演奏会はやめられない。

 さてさて、本日はどうなるか。M.K.

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クライス・コミュニケーションVol.8-1996.3/29(Fri.)

(上坂 学・室内楽シリーズ Vol.24)

−フルートは、どうしてフルートの音がするのですか?−

 皆さんは、どんな楽器の音がお好きですか?言い換えれば、どんな音色がお好きでしょうか。今日、この新聞を読んでいるあなたは、少なくともフルートを嫌いでは無さそうですね!さて、どうしてフルートは、'フルートの音'がするのでしょうか。音には、聞こえている音そのものの他に、倍音という聞こえない音が含まれています。その倍音の多さや高さによって様々な楽器の音に聞こえ、倍音がある特定の条件になった時、フルートとして認識されます。自然界の音には、ほとんど全ての音に倍音が含まれているので、何の音か判断出来るわけです。フルートの音色が人によって異なるのも、倍音構造の違いに由来します。倍音構造は、息の圧力や息のスピードによっても違ってくるわけで、それぞれの条件が微妙に影響しあい、その奏者の個性となってあらわれるのです。奏者自身も、ホールやお客さんの数、共演者や天候によって気分(感性)が影響されるので、演奏ごとにわずかな違いが出て来ます。だから、生演奏はいくら聞いても飽きずに楽しめるわけで、この複雑さはとても電子楽器では不可能なのです。

−他の楽器では−

 本日のハープではどうでしょうか。ハープは指先で(爪では無く)弦をはじいて演奏しますが、指の太さや硬さ、また弦をはじくときのスピードやはじく場所などによって音色が変わります。他の弦楽器、例えばヴァイオリン属では、弓のスピードや圧力、ギターでは爪の質やはじく場所などで音色が変わります。誰が弾いても音色が変わらないと思われがちなピアノも、鍵盤を弾く時の速度だけでも音色がおおきく変わってくるのです。
 生演奏の素晴らしいところは、これまで述べたような微妙な味わいを体感共有出来る事にあります。それは、奏者と聞き手の環境が(あたりまえですが)同じだからこそで、奏者が緊張したり本当に楽しんで演奏すれば、聞き手も緊張したり、聞いていて楽しくなってきたりするなど、奏者との一体感が保てます。ですから、私自身も演奏会が大好きなのです。 M.K.

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クライス・コミュニケーションVol.9-1996.7/26(Fri.)

(上坂 学・室内楽シリーズ Vol.25)

−演奏者の心得・その1 考えたくもない緊張の瞬間−

 皆さんは音楽を楽しむ時、演奏会でその奏者がどんな事を思い、感じているのかをお考えになった事はありますか?@きっと精神を統一し、プロにしかわからない音楽の奥深くへ旅をしている?Aそれとも、音楽で我が心を伝えたくてウズウズしている、Bいや今日の売上を期待して、打ち上げでなにを食べようか、その後はカラオケで・・・。Cいや、そんな余裕は無い!あの難しいパッセージ、ちゃんと吹けるだろうか。答。@有り得る。しかし、正気さを失わない程度に。A私の場合、大いに有り得る。ただし、他の2人の事は知らない。B絶対に有り得ない。自主公演(当シリーズもそうです)は赤字にならぬよう必死なのです。Cプロとしてそんな恥ずかしい、まったくプライドってもんがあるんだから。余裕ですよ余裕、と希う。本当の答。さあ、精神を統一して。イッパツめは大事だぞ、お客さんの心をつかむんだ、でなきゃ最後までちゃんと聞いてもらえないぞ。そう、やれば出来るんだ、誰も言ってはくれないけれど、出来るんだから自身を持て。あ、いけない、もっと笑顔だ、テンションをあげてっと・・・。一発勝負の生演奏、どんなプロでも出だしは恐いのです。なぜなら、演奏家も普通のヒトなのですから。

−演奏者の心得・その2 楽しまなきゃソンソン−

 お客さんはどんな気持ちでこの演奏会に来てくれるんだろう。フルートのトリオの演奏会ってめずらしいからな。プロやプロみたいなアマチュア演奏家がテクニックを盗みに来るのかも。おれって、そんな偉い人だったかな。いや、ありえなくもないぞ。それとも、クーラウ命、の愛好家が来たのかな。そんなの国X音大のI先生ぐらいだし。今日の演奏会の持味はっと。軽快で明快、明るい中にも哀愁が漂い、終わってみれば楽しく心豊かになれる。そうとも、練習はバッチリしたんだ。あとは奏者自ら楽しむことだ、楽しまなきゃ、楽しまなきゃ・・・。
 震える膝と冷や汗の中、色々考える演奏家も結構大変なのです。M.K.

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クライス・コミュニケーションVol.10-1996.11/6(Wed.)

(上坂 学・室内楽シリーズ Vol.26)

−室内楽シリーズを振り返って−

 本日の室内楽シリリーズVol.26をもって、当シリーズは10年目に入ります。記念すべき第1回目「クワルテットの楽しみ・T」は1987年10月9日、ゲストは本日と同じN響の方々でした。以来、のべ約60名の方々にご出演頂きました。皆さんどの方もとても素晴らしい演奏家ばかりで、沢山の事柄を勉強させて頂きました。また、演奏会の運営を手伝って下さる方や、心温かいお客さんにも恵まれました。
 奏者の息遣いを感じられる小さいホールで、ティータイムのある和やかな雰囲気の室内楽演奏会は、当時としては珍しいものでした。お客さんの中に常連さんも増え、色々と貴重なご意見を頂くようになり、大変ですがとてもやり甲斐のある演奏会に育っていきました。演奏会というのは運営スタッフだけでなく、お客さんと共に創っていく物だとつくづく感じさせられました。ご意見の中には毎月の開催を望む方、とにかくポピュラーな曲目を望む方、逆に普段めったに聞けない曲目を望む方、音響の良いホールでの開催、など様々で、毎回プログラミングには悩まされています。しかし、この室内楽シリーズも、ある意味では成熟期を迎えた様に思います。このままのスタイルで続けるのも良いのですが、他に良い方法があるように思えてなりません。

−地域活動としての演奏会と室内楽シリーズの今後−

 私は現在国立市に住んでいますが、当然地域の文化活動に関心があります。人間として、その地域にとけ込んだ生活を送れる事が、豊かな人生の第一歩だと考えています。私は演奏家ですので、地域文化に微力ながらも寄与出来るかも知れません。これらの事やアンケートのご意見を考慮し、現在の室内楽シリーズを次の3つのスタイルへ移行する事を考えました。

1.シリーズ フルート三昧
 50〜60席の小さいホールでアットホームな演奏会。フルートとピアノで数々の名曲を。年8回〜10回開催。

2.クライス サロン コンサート
 名曲喫茶での3本のフルートによる演奏会。めったに演奏されない曲も続出。毎月開催。

3.上坂 学・室内楽シリーズ
 現在の「音楽の森室内楽シリーズ」をリニューアル、370席の広く音響の良いホールで室内楽の名曲を。年2回開催予定。

−今後共よろしくお願い致します−

 上記3つの演奏会は、それぞれに良さがあり特徴があります。フルート三昧は舞台の無い、つまり"広い部屋"での演奏会ですので、気楽に演奏会に"参加"して頂けます。サロンコンサートは、ワインとジュースで和やかな雰囲気、室内楽シリーズは、全身たっぷりと音楽に浸って頂けます。今後共、よろしくお願い申しあげます。 M.K.

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クライス・コミュニケーションVol.11-1997.4/18(Fri.)

(上坂 学・室内楽シリーズ Vol.27) 後記Vol.27

-ようこそ!新・室内楽シリーズへ-

 室内楽シリーズ10周年を記念する今宵の演奏会へお越し下さいましてありがとうございます。お陰様で当室内楽シリーズも本日の公演をもって11年目に突入です。
 前回までの会場は、本日のホールに比べ半分以下の客席数しかありませんでした。ですから、ご来場のお客様にとっては演奏者を間近にみられ、その息遣いを直接的に感じられるというメリットがありました。演奏者の立場からも、演奏会を本当に共有出来る、演奏している曲を"共演"しているといっても過言では無い貴重な素晴らしい時間が過ごせます。しかし、客席に視線を向ければ必ず誰かとは視線が合いますし、一度など演奏中に最前列のお客様に楽譜を覗かれるという、大変緊張した経験もありました。本日の様な比較的大きく、ちゃんとした(?)舞台のあるホールでは、客席は暗いので視線が合うということはあまり無く、勿論楽譜を覗かれる事も無く、前記の様な緊張はありません。そして何よりも音響が良い、という事が最大のメリットなのです。

-演奏会も色々あっていい-

 我々の演奏する楽器は、伝統的に石造りの家屋を持つ文化圏で発達して来ました。それらは、大体において残響が多いので、フルートでいえば息の雑音、弦楽器では弓で弦をこする音などの"雑音"を気にせずにこれたのです。ですから音響が良い、つまり残響があると言う事がとても重要であり、本来の姿である事も事実です。
 音響の悪いホールでは演奏会をやらないという"大家"もいますが、私はそうは考えません。音響の悪い大きいホールなら私も遠慮しますが、小さく狭い会場では、たとえ少々響きが悪くとも、お客様とのコミュニケーションが密にとれるという素晴らしいメリットがありますのでやめるつもりはありません。当いずみホールBホールでの「シリーズ・フルート三昧」や、荻窪にある名曲喫茶ミニヨンでのサロンコンサートはどちらも50席以下の会場ですが、少人数で密度濃く音楽を堪能出来る演奏会です。そのときの直接的なお客様の反応が、良くても悪くても、とても尊く、ありがたく、そして大好きなのです。 M.K.

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クライス・コミュニケーションVol.12-1998.2/13(Fri.)

(上坂 学・室内楽シリーズ Vol.28) 後記Vol.28

-ソナタって?作曲形式とは?-

 皆様室内楽シリーズへお越し下さいましてありがとうございます。前回からは少し間が空きましたが、これからも皆様に楽しんでいただけるように頑張っていきたいと思っております。

 さて、本日のプログラムには2曲の「ソナタ」が含まれています。「ソナタ」っていったい何のことでしょうか。また、曲にはその構成に何か決まり事があるのでしょうか・・・実はあります。作曲形式、なんて言います。歌謡曲もイントロがあって、1stコーラスがあって、サビがあって、間奏があって・・・クラシックも似たようなものです。ただ、クラシックの曲は長大なだけです。

 ソナタ、とは本来「ソナタ形式で作曲された曲」という意味です。普通ソナタと聞いて連想するのはピアノやフルート、その他様々の楽器の独奏又はピアノ伴奏付きの曲を思い浮かべますね。交響曲をソナタとは呼びません。「ベートーヴェン/オーケストラ・ソナタ第5番”運命”」変です。でも本当はこれも間違いではありません。何故ならソナタ形式で作曲された楽章があるからです。ピアノ・ソナタだって全部がソナタ形式で作曲されているわけではないのですから。

 ではソナタ形式ってなんでしょう。先の歌謡曲や文章の起承転結に少し似ています。それはおおよそこんな具合です。

第1の主題−第2の主題−主題の展開−主題の再現−終結部。

簡単に言えば、メロディがあって、それを変化させて、またメロディーが戻って、エンディングがある。曲の冒頭にイントロが付く場合もあります。主題(メロディー)が再現されるのは、録音物がなかった時代に、初めて聞いても覚えて貰えるようにとの配慮だったそうです。なるほど、ムーケのソナタ1楽章の主題も、何回も出てきます。初めて聞いてもすぐに覚えられそうですね。

 ジョリベは事情が少し違いますが、イントロがあって主題があり、その主題も展開されたり再現されたりちゃんとしたエンディングもあり、前衛的な感じのする割に構成は古典的です。この曲ももうすぐやってくる21世紀になれば「古典」と呼ばれるでしょう。シューマンの曲はもっと単純明快、第1の主題(A)−第2の主題(B)−第1の主題(A)という「3部形式」で作曲されています。

M.K.

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